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執筆者の写真Kunihiro Sugiura

パート譜づくり

 僕は浄書家ではないので、連桁の角度がどうのこうのとか微細なスペーシング(音符と音符の距離)の専門的な事はよくわかりません。(一見して明らかに不自然だと思う箇所は調整しますよ。)

 自分がパート譜づくりで一番心がけているのは、「初見演奏でも余計な神経を使わない楽譜」です。それはプロ用であろうが愛好家向けであろうが関係ありません。


 僕は30年近く楽譜作成ソフト「Finale」を愛用していますが、初期vers.に比べたら本当に作業が楽になりましたね。


↓なつかしいFinale 2.0(1989) のマニュアル。全て英語です。。。



 ほんの一時「Sibelius」に浮気しましたよ。音符やスラー、記号類の衝突を自動的に避けてくれる「マグネティック・レイアウト機能」を体験した驚きと言ったらそれはそれは!

 でも特殊な記譜法の操作法がわからないといちいちマニュアルを引っ張り出して、アレンジどころではなくなってしまい、結局はFinaleに落ち着いてしまいました。

 

 さて本題です。Finaleでのパート譜づくりですが、曲ができ上がるとそのファイルは「原譜」として何も手をつけずにそのままにしておきます。正式なスコアとパート譜は「原譜」をコピーし、それぞれ作業を行います。

 スコア上の一段に複数の声部があるHornなどは完全に1st、2nd、3rd、4thと分けて作成します。吹奏楽の出版譜で「Flute 1&2」「B♭Clarinet 2&3」「Trumpet 2&3」というのを良く見かけるのですが、決して好ましくはありません。ページ数や部数など出版社の都合で制限や条件があるかと思いますが、プレイヤーが余計な神経を使わずに気持ち良く演奏できるパート譜とは言えないでしょう。



 Timpaniと打楽器は可能な限り1枚のパート譜にまとめてしまった方が、持ち替えやセッティングを決めやすいです。(ポピュラー曲で持ち替えがない場合は単体の方がかえって見やすいこともあるので臨機応変に。)





 打ち消しの臨時記号(浄書家の間では”親切臨時記号”と呼ぶらしい)をつけ、長い休みの間や演奏直前に目立つフレーズをガイド音符として挿入します。まだ一度も聞いたことのない音楽をこれから演奏するプレイヤーにとって、ガイド音符ほど手がかりになるものはありません。こちらの作業としては正直言って煩わしいですよ。でも、休みを数えているプレイヤーが「お、出たな!そろそろ準備だ。」と確認できる安心感を与えることが、奏者への敬意、作成者の愛情だと思います。(吹奏楽コンクールの課題曲や近頃のオリジナル作品でガイド音符を見たことありますか?)


 それからいよいよレイアウトに移ります。

 弦楽器は弓を使い2人で1枚の楽譜を見るので譜面台からプレイヤーまでの距離が管楽器よりも若干遠くなります。したがって、管楽器のパート譜よりも五線の幅は広く音符も大きめ。僕はこの頃、管・弦問わず全て「B4版」で作成しています。


 さて、レイアウトで大事なのが「譜めくり」場所探し。譜めくりのできないパート譜はパート譜失格!「プレイヤーが何とかしてくれるでしょ」という横柄な態度は結果的に自分の首を締めることとなります。


 弦楽器で長休符がないパートは「開放弦で弾ける」「同じパッセージの繰り返し」「白玉延ばし」のポイントを見つけます。

 Piano等大譜表で書かれほとんど休みのない楽譜は「片手で弾ける場所」を見つけます。


 レイアウトが決まると五線を一段ずつ目を凝らして見てゆき、音符や記号・スラーなどの衝突がないか、不自然な箇所がないか調整し、一つのパート譜を完成します。(その後PDFに落とし、メールで納品。)

 

 音ミスや強弱記号の入れ忘れなど思わぬ発見があり、時間はかかりますが実りのある作業です。自分の好きなBGMを流しながら行うパート譜づくり、慣れてしまうと楽しいです。



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